ニッカウヰスキー(ニッカウイスキー)が世に贈り出した、ウイスキー界の小さな巨人フロムザバレル。
独特な四角いボトルのデザインコンセプトは「ウイスキーの小さな塊」。
グラフィックデザイナーの佐藤卓さんが、デザインしたもの。
「濃いものは少ない量のほうが美味しそうである。(中略)味の濃いものは少ない量。つまり、小さな塊という隠喩に則ってこのような首の短い四角いボトルをデザインした。四角いボトルは同量の円柱ボトルとくらべ、正面から見て小さくなる。」
このような想いが込められているようです。
人間心理に則って作られたデザインなんですね。
そして気にあるのはやはり、味ですよね。
この記事では、フロムザバレルの特徴・味・香りを、実際に購入し、試飲をしてレポートしています。
ストレート、ロック、水割り、ハイボールの順にそれぞれの飲み方の特徴を解説させていただきますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
それでは、早速見ていきましょう!
「フロムザバレル」の特徴・味・香り
ストレートで飲んだ際の特徴
香りはとても奥深く、キャラメルとコーヒー、チョコレートを感じます。
アルコール度数が51.4度と高い割に、アルコールのツンとくる嫌らしさがほとんどありません。
口に含むと、ガツンとくる重厚感がありますが、角が取れた味わいです。
粘性もしっかりあり、余韻はドライでありながらも長め。
複雑な仕上がりと言うよりも、調和がとれているといった印象です。
力強さがありますので、味もかなりしっかりとしていて、飲み飽きることがありません。
全体を通してみると甘めと言ったところ。
力強く、まろやか、そして甘みもしっかりあるというのが特徴です。
ロックで飲んだ際の特徴
程よく加水されたことにより、フロムザバレルのポテンシャルが引き出されます。
ストレートで飲んだときの重厚感はやや薄れますが、口当たりはよりまろやかになり、甘みと旨味が心地よく感じられます。
余韻のドライさは甘みを帯び、心地よさはそのままに、チョコレートの風味が強くなります。
冷やして飲むことにより、味の輪郭がハッキリとします。
重厚感がより強く欲しいときはストレート、もう少しサッパリと飲みたいときはロックにするという飲み分けができます。
コクもしっかりあるので、氷が溶けて加水されても味が崩れることがありませんよ。
水割りで飲んだ際の特徴
ロックよりもさらに加水されたことにより、とても飲みやすい味わいになります。
軽やかに飲めるようになるのですが、甘み、微かなキャラメル、コーヒー、チョコレートのフレーバーは失われません。
余韻の長さもそのままに、程よい旨味が口の中に残ります。
口当たりが軽いのが特徴と言うよりも、程よい余韻を心地よく楽しめるというのが、水割りで飲んだ際の特徴。
甘みと軽やかさのハーモニーをお楽しみください。
ハイボールで飲んだ際の特徴
他の飲み方に比べ、とても華やかで飲みやすいウイスキーに変化します。
炭酸で割ることにより、さらに甘みが際立つようになり、良い意味で重厚感がなくなります。
アルコール感はほぼ感じられなくなり、蜂蜜、花の蜜のような、植物性の甘みが目立つようになります。
炭酸で割ってもここまで味が崩れないのは、嬉しいところ。
ちょっとパンチの効いたハイボールが飲みたいなんてときに、まさにうってつけです。
また、ハイボールにしても余韻の長さは失われていないので、ゆったりと飲むことができますよ。
フロムザバレルの味わいまとめ
重厚感のある力強い味わいで、甘みがあり、粘性があるのが特徴。
香りはとても奥深く、キャラメルやコーヒー、チョコレートを感じることができます。
香りの特徴は、味わいにも継承されていて、心地よい余韻のなかにその風味を感じることができます。
アルコール度数が高めのウイスキーですが、刺々しさはほとんどなく、非常に調和がとれた味わい。
オススメの飲み方は、ロック、ハイボール。
キリッと冷やしてロック飲めば、味の輪郭がハッキリとして、よりフロムザバレルの味わいをしっかりと感じることができます。
また、炭酸で割ってハイボールで飲めば、ガラリと印象が変わり、より華やかな味わいを楽しむことができます。
加水しても崩れない味の強さをぜひご体感ください。
- 原産国:日本
- アルコール度数:51度
- 価格:約3,500円/500ml(2021年4月現在)
- おすすめの飲み方:ロック、ハイボール
フロムザバレルの歴史
フロムザバレルは、1985年にニッカウヰスキーが発売をしたウイスキーです。
こうして見てみると歴史が深いですね。
当時のフロムザバレルには、「特級」というラベルが付けられていました。
この特級というラベルはどういったものなのでしょうか。
詳しく見ていきましょう。
1953年に原酒含有率によって、酒税を掛ける制度が制定され、3級~1級までの等級が定められました。
この制度が、1953年に変更され、2級、1級、特級となります。
等級の詳しい内容は以下の通りです。
- 2級:アルコール度数39度以下
- 1級:アルコール度数40度以上~43度未満
- 特級:アルコール度数43度以上
アルコール度数が51.4度あるフロムザバレルは特級に該当するので、特級ラベルがつけられていたというわけなんですね。
この等級の制度が、酒税を管理していたというわけです。
※特級は高級価格帯に該当し、税金が高額でした。
そして、1989年4月1日。
酒税法改正により、現在のアルコール度数によって税金を定める形式に変更されました。
税負担が軽くなったのです。
しかし、その時代では、フロムザバレルの高いアルコール度数と、重厚感のある力強い味わいは、受け入れられていませんでした。
そんな中、2009年にWWA(ワールド・ウイスキー・アワード)の「ベスト・ジャパニーズ・ブレンデッドウイスキー」という賞を受賞します。
フロムザバレルの美味しさが、ついに世に認められたというわけですね。
その後も快進撃は続き、2011年~2016年までは、6年連続で「ISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)」で金賞を受賞。
さらに2015年には、「ISCインターナショナル・スピリッツ・チャレンジ」で、450種類以上のウイスキーの中から、カテゴリー最高賞となるトロフィーを受賞しています。
昔は2,000円程で購入できたフロムザバレルも、今では人気の影響で高騰傾向に。
フロムザバレルは、ウイスキー通にも高く評価されるウイスキーの仲間入りを果たしました。
- WWA(ワールド・ウイスキー・アワード)
世界100カ国以上で発行されるイギリスのウイスキー専門誌、「ウイスキーマガジン」が主催する、2007年に始めった国際コンペティション。
ウイスキー専門のコンペティションとして、世界中のウイスキー業界から注目をされています。 - ISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)
イギリスの酒類専門出版社「ウィリアム・リード」の主催により毎年行われる、スピリッツ(蒸留酒)のコンペティション。
世界中のマスターブレンダーなどからなる審査員が、エントリーされたウイスキーをブラインドテイスティングによって評価されます。
フロムザバレルの豆知識
フロムザバレルは、製法がちょっと変わったウイスキーです。
同じくニッカウヰスキーの余市と宮城峡で熟成されたモルト原酒と、グレーン原酒をブレンド。
ちなみにモルト原酒は、麦芽が原料。
グーレン原酒は、トウモロコシ、ライ麦、小麦などの穀類が原料です。
ブレンドした原酒をもう一度樽に詰めて数ヶ月熟成させます。
そして、これを瓶詰めする際に、加水を最低限に抑えます。
加水を抑える理由は、風味を損なわないようにするため。
また、原酒を組み合わせることをマリッジ(結婚)と言います。
マリッジとは、原酒同士が深く組み合わさることによって、新たな風味を生み出すことを意味します。
なにやらロマンチックですね。
組み合わされ熟成された原酒は、加水が抑えられ、「樽出し」のままボトリングされます。
瓶に樽から直接ウイスキーが入れられるというわけです。
この製法により、骨太でリッチな味わいが生まれるのです。
樽出しというワード思い浮かべて飲むと、味の感じ方も変わるかもしれませんよ。
今回、ウイスキーの「小さな塊」フロムザバレルをご紹介させていただきました。
ウイスキー初心者の方にも、上級者の方にもオススメできる1本。
比較的安価なのも嬉しいところです。
力強くも甘く、調和がとれた味わいを、ぜひ楽しんでみてくださいね。